2018年05月13日

木樽の使い方の話

ワインをよく飲まれている方は、樽の使い方によって出来上がって販売されているワインのキャラクターが異なってくることは認識されていると思います。樽の風味もワインを構成する中での重要な要素とされています。
ドイツワインには繊細なワインが多く、樽の風味を利かせるために木樽を使用するということは率で言えば多くはありません。それでも木樽w使用している醸造所はたくさんあります。
今回のドイツでは、試飲していて樽に関しての質問をすることが多く、色々な話も聞いたので、樽に関して少し書いてみます。
醸造に関しては専門ではないのと細かく書くとキリがないので、あまり詳しくは書かず概要といったかんじで書かせていただくことをご了承ください。

一般的にドイツでは白ワインで木樽を使用する場合はシュトゥック(1200リットル)、フーダー(1000リットル)といった大樽を使用します。その倍以上の巨大な樽を使用します。これらは樽の風味をつけるため、というよりは、酸をまろやかにしたり、天然酵母の働きをさせる目的で使用されることが多いです。ステンレスタンクのほうがクリーンだったり、温度管理もできたりするので、ステンレスタンクでの発酵、熟成が大半の醸造所もたくさんあります。
ヴァインベルクが取り扱っている醸造所では全て木樽というところもありますが、リースリングに関してはハウスワインなど大量に生産するものはステンレスタンクで、上のクラスは木樽で熟成、というところが多いです。その比率は醸造所によって異なりますし、上のクラスのワインでも年によってはステンレスタンクで熟成させるというところもあります。
リースリング以外では、同じように低価格帯はステンレスタンク、上のクラスでは木樽、というところが大半を占めています。
ただし、木樽、といってもその範囲がとても広いのです。今回の出張ではその選択肢の多さをより感じることとなりました。

先に書いたような1000リットルを超える大樽はドイツでは多用されているのですが、他の国のワインでは木樽といえばもっと小さい樽が思い浮かぶと思いますし、ドイツでももっと容量の小さい樽は使われています。


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この画像はラインヘッセンのグッツラー醸造所のケラーです。たくさんのバリック樽でワインが熟成されていました。
バリックといえば200リットル台を想像される方が多いと思いますが、ここで使われていたのは350リットルのものです。
そしてトノーと言われている500リットルの樽やハルプシュトゥックと言われる600リットル前後の樽も使われています。
バリックでないものは主に白ワイン用ですが、フランス産のトノー、ドイツ産のハルプシュトゥックは品種や年によって使いわけているそうです。例えば、リースリング、ヴァイスブルンダーは樽の風味はいらずさわやかにしたいのでハルプシュトゥックに、グラブブルグンダーは複雑味がある味わいにしたいのでトノーやバリックに、ということです。
もちろん全て同じ容量の樽に入れるのではなく、大きさが異なるものや新樽で熟成させたものも混ぜて、瓶詰め前に合わせてからボトリング、というやり方も一般的です。
ヴュルテンベルクのクナウスはこの樽の選択の感性が素晴らしく、収穫したぶどうのジュースで出来上がりが想像でき、適した大きさの木樽にワインを入れます。500、700、1000、2000リットルといった異なる大きさの樽にワインを入れます。前は350のバリックも多く使っていたそうですが樽の風味が強すぎるということで、最近では500リットルのをメインに使っているとのことでした。

また、複数のぶどう品種をブレンドしてひとつのワインとする場合には、品種ごとに別々で熟成させる場合も、木樽に入れる前にミックスすることも両方あります。


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先のグッツラーは赤ワインはステンレスタンクで発酵せてからだいたいは4か月後に木樽に移します。
クナウスは、発酵の段階から木樽に入れているものも多いです。


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この画像はアールの醸造所のケラーです(といっても工場地帯のガレージの一角ですが)。たくさんのバリックやトノーにシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)が入り熟成されていますが、ミッテルラインにも畑を持っていて、リースリング、グラウブルグンダー、ソーヴィニヨンブランも木樽に入っています(ステンレスタンクで熟成、発酵しているものもあります)。
この造り手では、わりと若い年数の使用の木樽でリースリングを熟成させているワインも多々あります。試飲すると樽の風味を感じるワインが複数ありました。一般的にはリースリングは樽の風味がないほうが良いとされています。しかしこの造り手は木樽の中で長く熟成させることでより複雑味を出そうとしていま。新樽で熟成させた2011年のリースリングを試飲しましたが、ボトリングしてから年数が経っていても樽の風味は強く感じました。開けて時間が経てば消えていくし、デキャンタなどをすれば問題ないと言っていましたが、ヴァインベルク店主にはこの風味は少しじゃまに感じました。とはいえ、別のワインで木樽がいい作用をしているリースリング・トロッケンもありました。
ここのように新樽、何回か使った樽、という選択もワインのキャラクターに影響します。ドイツではそのワインの10パーセントから30パーセントくらいを新樽で、というパターンが多いと思います。ドイツではうまみ、出汁のようなタイプのジュースができるので、樽でワインの味を造るというよりは樽は補助的な役割と考えている造り手が大半です。それでも造り手によって樽の風味をについての考え方が異なるので、フランスのタイプのように樽がきいているワインを好むところやもっとダイレクトなぶどうの味わいを好むところなどさまざまです。そしてひとつの造り手でも色々なタイプのワインを造っていたりもします。
ファルツのシュピンドラーでは、新樽だけれども、一年空のまま放置してから使用する、なんていうことも聞きましたし、選択肢はかなりたくさんあるのです。


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この画像はザールのファルケンシュタインのケラーです。ここは全て木樽での発酵、熟成で、大半は1000リットルのフーダーで、赤ワイン用のバリックや少量のみの収穫の時用の500リットル樽も少しあります。
ここの樽のほとんどは10年以上使用しているもので中には30年以上使用しているものもあるそうです。
樽にも酵母の作用などの癖があり、毎年同じ樽に同じ区画のぶどうを入れるということをしています。
このように樽の使い方も醸造所によってまちまちなのです。

ステンレスタンク、大樽、バリック、樽でも新樽かそうでないか(ミックスの割合も)、軽く質問する際にはこのくらいの情報の会話になるのですが、使い方やどう作用させる目的なのか、など醸造所によって考え方がたくさんあり、できるワインも異なってくるということを今回特に感じました。
ただ、そういった細かいことを知ってワインを選ぶ、のではなく、できたものが好みかどうかでワインを選べばよいということも同時に思いました。好きな造り手の醸造の選択には異論はないので、やり方で選ぶ、のではなくできたワインで判断すればよいのです。もちろんワインの情報として、樽の情報も伝えることもありますが、その情報で選択はされたくはないなあとは思っています。

今回の内容は、何かの結論を出すものではなく、樽の使い方でもドイツには多様性がある、ということを知ってほしいという内容です。
畑の管理だけでなく、醸造でもさまざまな考え方がありドイツワインは生まれています。どうあるべき、というのは産地や品種の個性からではなく造り手から生まれるものだと思っています。もちろん産地や品種の個性を最大限に引き出すことをしているのではあるのですが。
すぐ近くの醸造所でもスタイルが全く違ったりするのもとても面白いです(品質は同程度だけれども醸造の仕方が異なるという意味で)。とはいえ、ドイツワインは、畑があってこそのワインという考え方をしている造り手が大半で、醸造でワインを造るのではなく、最高のタイミングで収穫したぶどうをよりいいワインにするための醸造の選択をしている、と考えていただきたいです。



ドイツワインショップ ヴァインベルク
http://weinbergwine.com


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posted by ヴァインベルク at 19:45| ワインのためになる知識 | 更新情報をチェックする