2015年01月20日

モーゼル川の100年前の地図の話

ヴァインベルクで自社輸入しているマルティン・ミュレンMartin Müllenのボトルのラベルはモーゼル川の地図のデザインです。
この地図が何なのか、この地図にはどういった意味合いが込められているのか、ということについて少し書きたいと思います。


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このラベルのデザインのもとになっている地図は、モーゼルのワインを生産している地域の全域が載っているのですが、その地図の一部分、ミュレンの醸造所があり自身のぶどうを栽培しているエリアをクローズアップしてラベルにしています。


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醸造所のゲストルームにはこのラベルのもとになった地図が飾られています(訪問した時の記事はこちら)。
川沿いなので細長いので2つに分割されています。下の左がルクセンブルクから流れているモーゼルの上流で、上の右端がライン川と合流するコブレンツの下流となっています。


この地図は1868年に作成されたものとされています。役所が税金を徴収するために作られた地図です。細かく畑名が記載されていて、良い畑とされているところは薄い赤色、濃い赤色に塗られています。
濃い赤色の畑が良い畑とされている畑で、濃い色の畑を所持している生産者は色が塗られていない同じ面積の畑を持っている生産者より高い税率が徴収されるという仕組みです。


この地図が2000年以降クローズアップされています。ミュレンだけではなくモーゼルの醸造所を訪問するとこの地図を見かけることが多いのです。試飲会や産地の紹介、雑誌やネットの記事でもこの地図のことを引用して語られることが多々あります。
なぜこの地図が引用されることが多いかということにはいつくかの理由があります。

まず、一番わかりやすいのは、これを見れば昔から良いとされている畑がわかるということです。その区画を所持してる生産者にとっては誇れるポイントです。
地図を見るとベルンカステルからツェルティンゲンまではほぼ真っ赤で、今も良い畑とされていて重要な地域だというのがわかります。
また、今はあまり注目されていないけれど、濃い赤色に塗られている区画の畑を持っている生産者にとっては、ポテンシャルのある畑だという証明になるのでこの地図の重要性は高くなります。

もうひとつの引用されている大きな意味についても書きます。
この地図には今はないような畑名がたくさん書かれていて、そして今の区画よりも細かく畑名が分けられています。
今はなぜ違うのかという大きな理由に1971年のドイツワイン法の改正があります。この時にいくつかの畑をひとつの畑名に統合してしまったのです。
そういうことで、この地図を見ると今はひとつの畑名になっているところでももっと細かく分けられていて、特級とされている区画とそうでない区画が混ざっている場合もある、ということがわかるかと思います。
この地図で特級とされている畑を所持している生産者にとっては、今の畑名の中でもポテンシャルのある素晴らしい区画を所有しているという説明ができてセールスポイントにすることができます。さらにその畑が今と同じ名前であるならば、オリジナルの部分を所有していると誇れることもできるのです。


マルティン・ミュレンではトラーバッハのヒューナベルクの畑のことを例に出すことができます。
この畑は100年前の地図では濃い赤色になっていて特級畑とされていました。しかし今はこの畑のことを知っている人は少ないので、この畑とワインの説明をする時にこの地図の話をするのはとても重要なセールスポイントとなるのです。

また、この地域は赤い色の畑がたくさんあったのですが、2000年くらいまではそれらの畑はうまく活用されていなくて、実力のある生産者も出てきたということで、100年前には良質な畑とされていてポテンシャルのある地域だということを売りにして地域として活性化させるためにこの周辺の醸造所でクリッツクライネリングDer Klitzekleine ringという団体を立ち上げました。良質で意欲的な生産者が増えたことに加えて、2000年以降ドイツでも辛口系を生産することにトレンドが変わってきていてこの土地が辛口、中辛口のリースリングを作るのにも向いていたので波にのっていけたということもあると思います。
今は10の醸造所が加盟しています。ケルンメッセなどの試飲会では団体として出展したり、毎年秋にはトラーベントラーバッハで加盟醸造所が集まって試飲会をしたり、ということもしています。この秋の試飲会には今までに3回訪れていてこの土地の良さを僕自身も存分に感じています。2009年に最初にこの試飲会に訪れた時にマルティン・ミュレンのワインを始めて飲んで当主のマルティンの人柄にも惚れたのです。


話は戻りますが、もうひとつ100年前というのをキーワードにする理由があります。
当時はモーゼルワインはブルゴーニュなどのトップワイナリーと同価格で取引されていたという事実があり、それがプロモーションとして取り上げやすい話題なのです。
また、造りとしても100年前のようなワインを目指すという動きもあります。自然を尊重した造りに原点回帰しようとする動きです。その時に100年前の価値の話はポイントとなります。
ストイックに昔の造りを目指すという生産者だけではなく、天然酵母や木樽といったできるだけ手を加えない機械やテクノロジーに頼らないワイン造りというのを心がけている生産者は増えています。
ミュレンもその一人で、この地図のラベルはそういう面でも重要な要素となっているのです。


色々と話はとんでしまいましたが、この地図がモーゼルワインをプロモーションする上で重要な意味を持っているというのはおわかりいただけたかと思います。
地図の作成時期は150年前とされていますが、話の都合上100年前ということで書いていきました。


マルティン・ミュレンのワインはこちらでお買い求めいただけます。


ドイツワインショップ ヴァインベルク
http://weinbergwine.com



posted by ヴァインベルク at 23:41| ワインのためになる知識 | 更新情報をチェックする