2016年10月02日

モーゼルのギュンター・シュタインメッツ醸造所を訪れて

ドイツでのこと、もう少し続きます。
今回はモーゼルのブラウネベルクにある醸造所ギュンター・シュタインメッツです。
モーゼルはすでに複数の取引先があって増やすのは難しいと思っているのですが、モーゼルをもっと知りたいということで興味のある醸造所を訪れることにしてその中で決めた醸造所がシュタインメッツです。訪れるまでここのワインは飲んだことがなかったのですが、知り合いの評判や著名な畑を含めて複数の畑からワインを造っているので他の醸造所との比較としても面白いと思ったのです。ビジネスとして取り扱うことはできないかもしれないけれどあなたのワインに興味がある、とメールしたら、数時間後に香港に出張していた当主からfacebookで歓迎するというメッセージが届きました。奥さんが当主に私からメールがあったことを伝えてすぐに連絡してくれたようでした。


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宿泊していたトリッテンハイムのベルンハルト・アイフェルからモーゼル沿いを通るバスでブラウネベルクBraunebergに向かいました。
写真は下流のほうを向いていて、ここから細長くブラウネベルクの村の集落があります。この通り沿いにシュタインメッツの醸造所兼自宅もあります。
奥に見える畑がブラウネベルガー・ユッファーとユッファー・ゾンネンウーアで、川の反対岸に遮るものがないところにある南向きの急斜面の畑です。ユッファーJuferは乙女、ゾンネンウーアーSonnenuhrは日時計の意味です。この数キロ先にベルンカステルがあります。


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醸造所の外に人がいてその人が当主のシュテファン・シュタインメッツでした。少し自分のことを話してから早速試飲が始まりました。が、この日は輸送のトラブルがあったらしく何度も電話をしていて忙しいようでその合間にこちらの対応をというかんじだったので少し時間がかかりました。小さい醸造所では少人数で全て自分たちでやっているのでこういうことはよくあることです。
写真の地図の赤くなっているところがシュタインメッツも所有している畑です。近所のブラウネベルクのユッファーをはじめ、ピースポートPesportのゴールトレプヒェンやケステンKesten、ヴィントリッヒWintrich、ミュールハイムMuelheim、フェルデンVeldenz、ドーロンDohronの畑を所有しています。ハウスワイン以外はブレンドせず畑ごとでワインをリリースしています。余談ですが、ケステンの畑にはパウリンスベルクとパウリンスホーフベルクの2つがあることをこの時に初めて知りました。

2014年産も2015年産もあるけどどうすると訊かれ、同じヴィンテージがそろっているのは2015ということと新しいヴィンテージの特性も知りたかったので2015年産のリースリングを中心に試飲することになりました。6月の時点でまだ瓶詰めされていないワインが複数あり、地下のケラーのタンクからその度に注いで持ってきてもらいました。
天然酵母による発酵で、それぞれの畑に合わせて木樽、ステンレスタンクを選択するそうで、畑の特性が表現できてなおかつおいしいワインを提供するという姿勢が見える造り手です。中には澱引きしないシュルリーの製法で造っているワインもあるのですが、それは奇をてらっているわけではなくその畑の果汁に一番合った製法だから選択しているのです。
個人的には名の知れた畑のものよりはマイナーな畑名の方が好みのワインが多かったです。その理由を後で分析してみました。
そのひとつが好みだった畑のぶどうの樹齢が長いということでした。樹齢が長ければおいしくなると一概に言えるわけではないのですが、おそらく著名な畑の方は最良なパートのエリアではないと思うので、そういうことも含めて比較するとそちらの方がよいと思ったのだと思います。
もうひとつは、土壌がブラウシーファー(青色粘板岩)だけの土壌ではなくシーファーの中に珪岩Quarzitを多く含んでいる土壌の方が好みだということがわかりました。川沿いではなく少し奥まったヴィットリッヒ、フェルデンツの畑は特に珪岩の多い土壌だそうです。土壌がワインに与える影響というのは科学的にはっきりとは証明はされていませんが、土壌の異なるワインを飲めばキャラクターに違いがあることはあきらかで、モーゼルの微妙な土壌の違いも味わいに違いが出ています。
この醸造所以外でも、今回のドイツではモーゼルの醸造所でも珪岩の話題がたまに出ていて、実際に試飲していての感覚でも珪岩を含んでいるシーファー土壌の方が辛口リーズリングに向いているのではと思うようになってきています。より複雑味が味わいに出て、柑橘系というよりメロンのようなニュアンスがあるので酸味がうまくまとまる傾向にあると思います。


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画像が畑の土壌の石で、上が珪岩を含むヴィットリッヒの畑で、下が川沿いの典型的なモーゼル中域のシーファーの地層です。
こうやって用意しているということは土壌、畑によってキャラクターが異なるということをしっかり把握している、ということでテロワールを重視した造り手ということがこのことでもわかります。
また、ブラウネベルク・ユッファーの畑でシーファーではなく砂岩の区画があるらしく、その区画のリースリング・トロッケンも試飲しましたが、たしかに今まで飲んできたユッファーのリースリングとはキャラクターが異なるのは興味深かったです。


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この造り手はリースリングだけでなく赤ワインも素晴らしいと言っている人もいるのですが、今回は時間がなくハウスワインクラスのピノ・ノワールしか試飲することができなかったのでシュタインメッツの赤ワインのポテンシャルはあまりわかりませんでした。
リースリングの甘口系は数種類試飲しましたが、今までこの地域の甘くワインは数えられないくらい飲んでいて、素晴らしかったワインと比較すると、わざわざ選ぶまでもないかなと思いました。
しかしシュタインメッツのリースリング・トロッケン(辛口系)は、他にはない味わいで、なおかつ今のモーゼルで最もおすすめできる辛口リースリングの造り手の一つと言えることができます。昔からの典型的なモーゼルという味わい、ではないと思うのですが、間違いなく今のモーゼルのおいしい辛口リースリングなのです。


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ちょうど2015年産のワインの瓶詰めをしていました。こうやって間近でワインの瓶詰めを見るのは初めてでした。

醸造所では試飲して気にいったワインの他にユルツィッヒのヘアマンのヴュルツガルテンの畑のぶどうをシュタインメッツで醸造した他よりも高価格なリースリング・トロッケンも購入しました。日本ですでにこのワインは飲んだのですが、おいしいのだけれどなんとなく違和感を感じました。その土地の天然酵母だとやはり近くの畑のほうが自然に感じるのかなあという考察をしました。
また、トリアーのシュタインメッツのワインに力を入れているワインショップでフェルデンツの2006年のファインヘルプを購入して日本で飲みましたが、熟成してからに味わいを経験することもできてよかったです。若いうちに飲んでもおいしい、熟成しても楽しめるワインを造っている造り手ということを感じることができました。

この醸造所を訪れることによってモーゼルのワインの経験値がかなり上がりました。今回のドイツでのモーゼル訪問は原点回帰としていたのですが、新しい発見がいっぱいでした。

今回シュテファンの写真を撮ることができませんでした。ワインや畑のもっとくわしい情報も含めてシュタインメッツのホームページを見てくださればと思います。英語版もあります。
シュテファンはワインが大好きでなおかつ研究熱心で、自分のところのワインだけでなく他の醸造所のワインもたくさん飲んでいるようで毎日のようにfacebookで飲んだワインを投稿しています。ゲストルームの写真にも写っていますが、この時にも飲みかけの他の造り手のワインがたくさんありました。

9月のワイン会でシュタインメッツのワインを提供したらとても好評だったので少量ですが空輸でシュタインメッツのワインを輸入することとなりました。10月中旬に到着予定です。販売できるワインは後日お知らせします。

10月23日の東中野リエーブルでの食事会でもシュタインメッツのワインは2、3種類提供予定です。ヴァインベルクのワイン会に参加されたことがない方でも気軽にご参加ください。リエーブルはフランス料理をベースにした独走的な料理を提供していて、ヴァインベルクのドイツワインともとても相性が良いです。



ドイツワインショップ ヴァインベルク
http://weinbergwine.com


posted by ヴァインベルク at 23:48| 醸造所紹介 | 更新情報をチェックする