読みものに費やせる時間が多くなっている方もいらっしゃると思いますので、ドイツワインのためになるようなことも書いていこうかと思っています。
今回はドイツワインのラベル表記について書きます。
ワインを資格等取得のための知識を深めるためとして勉強する方もいらっしゃいます。また、ドイツワインの場合はある程度の知識がないとラベルに何を書いているか読み取ることができないので、そのために知ろうという方もいらっしゃいます。
ドイツワインを販売をしている側といては、説明、解説する上でもドイツワインを好きでいるならこのくらいは知っておいてほしいという用語はあります(もちろん知らないことでどうとは思わず丁寧に説明はしますが)。
だだ、その中で得た知識、というのがけっこう問題があったりもするのです。資格などで合格すればテキストで書いたことを覚えていれば把握しているいると認識してしまうことが良くない部分もあるのです。特にドイツワインは、ラベル表記のトレンドやルールが年々変わっています。数年前に覚えた知識と異なっていることはざらで、例外も多数あったりします。なので、一度覚えたことが全てをわかっている、と思ってほしくないのです。
テキストには書いていないような例をヴァインベルクで輸入しているワインから2つ書きます。
ひとつは、Abfüllerアプフュラーについてです。
自社で栽培して収穫したぶどうから造られたワインにはGutabfüllung醸造所元詰め、Erzeugerabfüllung生産者元詰めと表記できます。家族経営の醸造所のワインの大半にはこれええらの表記があります(Schossabfüllung城、シャトー元詰めとか例外もありますが)。
その中でAbfüllerと表記されている場合には、自社のぶどうではなく他のぶどう農家から買取ったぶどうが含まれているワインを示しています。
著名な造り手でも経営のために生産量を増やすため、低価格帯のワインでは買い取ったぶどうを混ぜる場合もあり、そういったワインにはこの表記がされています。
遅霜や病気。カビ、雹などで収穫量が少ない年にはやむを得ず自社以外のぶどうを使用する場合も多くそういった年にはAbfüllerのワインが多くなていているかもしれません。そしてそういったことからも、一概にこの表記だからレベルが低いワイン、というわけでもないということも想像できるかと思います。
で、例外というのは、ヴァインベルクが今年輸入した
アールと
ミッテルラインの
ヨステンウントクラインJosten und Kleinのワインのラベルを見たら、畑名の書いているクラスのワインも含めてAbfüllerと記載がされていたのです。
どのワインもわずかながら買い取ったワインが混ざっているからなのか、だとすればどのくらいの割合なのか、ということなどを知りたかったので、この表記について造り手にメールで質問をしてみました。
その回答は、全てのワインは生産者が所有している畑から収穫して醸造したワインだが、畑の所有で登録している社名が醸造所とは異なるためこの表記になっている、ということでした。
こういった例は少ないとは思いますが、こういうこともあるのです。
また、別の生産者でひとつの銘柄だけこの表記になっていたので質問したら、いくつかはAbfüllerのワインもあるが、そのワインに関しては記載は間違いで自社ぶどうのみを使用しているとのことでした。そういったこともあったりします(小規模な生産者であり得るかと)。
もうひとつはLandweinの表記についてです。
日本に輸入されているドイツワインの大半は、13地域の中のひとつで栽培されたぶどうによるQualitätsweinクヴァリテーツヴァイン、あるいは加えて収穫糖度などの規定もクリアしたPrädikatsweinの表記があります。大半がこういったワインなので、これらの表記があるからいいワインという認識はなく、最低条件、当たり前といったとらえ方です。
Qualitätsweinの規定に達しないもの、85%がドイツの指定地域の中で栽培されているものはLandweinラントヴァインという表記になります。現在はDeutscher Landweinや産地を記して(例えばBadischer Landwein)表記されることが多いです。
で、近年日本に輸入されているワインでもLandweinの表記のワインをちらほら見かけるようになってきました。
これらのワインは、質が低いからでも、指定産地の中のぶどうを使用してないから、でもありません。その理由は、亜硫酸(二酸化硫黄)を添加していないからです。いわゆる自然派ワイン(ビオのワインとは異なります)、ヴァンナチュールと言われているワインにLandwein表記のワインがあります。
現在のドイツワイン法でQualitätsweinの規定に達していないからということでそうなっているのですが、正確には検査機関(合格するとAP
ナンバーがラベルに表記されます)の基準に満たないため、クヴァリテーツヴァインの表記ができない、ということだと思います。亜硫酸の最低量が決まっているのか、製造工程に添加の工程がが含まれているということが基準なのか、ということまではまだ調べていませんが、亜硫酸無添加のヴァンナチュールのタイプのワインには現在Qualitätsweinの表記ができなくて、Landweinの表記となっていることは確かなことです。
このことに気がついたのは、ヴュルテンべルクの
クナウスの亜硫酸無添加の
トロリンガー Pure(最初に輸入したヴィンテージは葉のラベルでWithout allというワイン名でした)です。Landweinと記載されていることがわかり、造り手に質問してみてその理由がわかりました。
おそらくこのワインに出会っていなくても、日本でこの表記のワインを見かけて気になって調べたかと思います。
まだ日本語ではこのLandweinの理由について明確に説明しているものはほとんどないかと思います。おそらく、こういったワインを輸入しているインポーターは、ドイツワインだけをやっているというところではないので、QualitätsweinではなくLandweinという表記に違和感を感じることがないか、ということもあるかと思います。
こういった、クオリティが高いけれどQualitätsweinになっていないという例で有名なのはファルツのTafelweinターフェルヴァイン(テーブルワインの意味)にあります。ランドヴァインでもなくターフェルヴァインとなっている理由は、ドイツにある畑のぶどうではないからです。フランスのアルザスとの国境は何度か変わっていて、所有している畑の一部が現在はフランス領にある、という生産者も存在するのです。そういったフランス領の畑はから造られたワインは、どんなに質が高くグローセスゲヴェックスGGのクオリティがあったとしてもQualitätsweinとはできず、ドイツのぶどうではないということでTafelweinになってしまうのです。
今までのテキストではピラミッドで説明していて、ターフェルヴァインよりラントヴァインが質が上、その上にクヴァリテーツヴァイン、その上がプレディカーツヴァインとされていますが、この感覚は無意味です。上記のようにラントヴァイン、ターフェルヴァインには質とは別の理由があります。そして最近、ドイツワインの知識を得た人には常識となっている、VDPに所属する醸造所のトロッケン(辛口)はプレディカーツヴァイン(カビネットやシュペートレーゼなどの等級)にはせず、クヴァイテーツヴァインとしてその中でオルツヴァインやグローセス・ゲヴェックスといった独自の格付けを採用しています。
これらのように前に得た知識が当てはまらないことがあるのです。どんどん変わっていくこともあり、おそらくそのうち亜硫酸無添加のワインもクヴァリテーツヴァインに認められるようになると思います。
格付けの変化や亜硫酸無添加という新しいトレンドのワインの出現で、認識の仕方を変えなくてはいけない場合や、Abfüllerのような例外があったりします。常に新しい情報を得ているとしても、ドイツワインの場合は例外がたくさん存在するのが悩ましいところなのです。特にトロッケンやファインヘルプなどの残糖数値による味わい表記にはイレギュラーがたくさんあります(トロッケンなのにトロッケンと表記されていないとか)。
なので、情報を得ることよりも、疑問を持つことのほうが大切だと考えています。その表記に対して違和感を感じ、なぜ、どうして、と思う感覚が大事だと思います。自分が得ている知識の中で回答を得るのでなく、その考えでよいのだろうか、と思うことが大事です。
そして自分で調べたり、わかりそうな方に訊ねる、ということをすればよいのです。ドイツワインだけで生業んしている人たちでさえ疑問に思うことが多々あるという状況なので、そういったことが大事なのです。
得た知識で満足するのではなく、その知識を活かして、疑問や注目すべき点を見抜く、ということが重要な事だと考えています。そしてそのことにより知識や経験値はより増えていくのです。
ラベルを読むための知識は必要ですが、知っている知識だけでとらえてしまうと世界を狭めてしまう可能性もあるのです。
なのでインポーターや販売業者、お知り合いなどのおすすめや説明にふれてみるということもワインを愉しむ上では重要なことだと思います。
枠にはめずにワインを愉しんでいただきたいです。
最後に現在ヴァインベルクで販売している3本セット3種類のご紹介です。
どのセットも単品で3本買うよりお得な価格設定としています。どのセットも送料込みの税込み価格です。
ネットショップの各セットの商品説明の各ワインのリンクからそれぞれのワインの商品解説もご覧いただけます(スマホでネットショップをご覧の方は、PC用ページをクリックしてからご覧ください)
春のトロッケン3本セット 8,000円(税込) 送料込み
http://weinbergwine.com/15_230.html
ジルヴァーナー ブントザントシュタイン 2018 Bickel-Stumpf (フランケン)
ヴァイサーブルグンダー(ピノ・ブラン) 2018 Bernhard Eifel (モーゼル)
シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール) グナイス 2016 Franckenstein (バーデン)
トロッケン(辛口)の白2本、赤1本のセットです。
リースリング以外のドイツを代表するトロッケンに適したぶどう品種3種類ですが、土壌のキャラクターの違いにより、産地、ぶどう品種の典型的なキャラクターとは少し異なっていますが、どのワインもドイツワインの魅力を存分に感じられるワインです。そして、しみじみおいしい、どんどん飲みたくなるヴァインベルクならではのワインです。
美味しいワインを飲みたいというだけでなく、ドイツワイン、産地、ぶどう品種の魅力をもっと知りたいという方にもおすすめできます。
春のファインヘルプ、甘口リースリング3本セット 8,000円(税込) 送料込み
http://weinbergwine.com/15_231.html
アルテンベルク ファインヘルプ 2018 Falkenstein (ザール)
QBA 2014 Martin Müllen (モーゼル)
ガルテンライ カビネット 2016 Josten und Klein (ミッテルライン)
中辛口から甘口のリースリング3本です。
まだ日本では甘口のイメージが強いドイツワインですが、現在は辛口ワインの割合のほうが圧倒的に高いです。しかしモーゼルを中心に今でも残糖のある魅力的なリースリングがたくさんあり、ヴァインベルクでも取り扱っています。
残糖イコール甘いと想像するかもしれませんが、酸や果実味、複雑みにより甘くは感じず、そしてトロッケン(辛口)にはないバランスで魅力のあるワインとなります。
残糖、感じる甘さの異なる3本をセットにしましたので、トロッケンからデザートワインの間のワインがどういったものかを感じていただけるかと思います。
そしてこれらのタイプにはドイツワインだからこその魅力が詰まっています。甘み(甘いではなく)の魅力を体感していただけます。
この中では一番甘みのあるカビネットでも軽やかで飲み疲れしません。食事の時だけでなくリラックス、落ち着きたい時にもおすすめできる3本です。
春の赤ワイン3本セット 9,000円(税込) 送料込み
http://weinbergwine.com/15_232.html
トロリンガー 2017 Knauss (ヴュルテンベルク)
アスマンズハウゼン ピノ・ノワール(シュペートブルグンダー) 2015 Bischöfliches Weingut Rüdesheim (ラインガウ)
ロート・ヒューゲル(4品種ブレンド) 2015 Bickel-Stumpf (フランケン)
赤ワインのトロッケン(辛口)3本です。
ドイツの赤ワインとしてよく見かけるラインヘッセン、ファルツ、バーデンではない産地の赤ワインをセットにしました。
ドイツを代表するというような典型的なタイプではありませんが、珍しいというわけではなく、ドイツらしさを感じられる赤ワインです。
ヴュルテンベルクのトロリンガーはチャーミングでありながらもコクがある、アスマンズハウゼンはドイツのピノ・ノワールらしい繊細さがありながら奥深く、フランケンの4品種ブレンドはドイツではあまりタイプの濃さがあり、それぞれのワインに特徴と魅力があり、ドイツの赤ワインの幅広さと可能性を感じていただけるかと思います。そしてそれぞれのワインの味わいからはドイツの今と昔の両方を感じとることができます。
どのワインも軽やかではあるけれどうまみがしっかりとあり、温かくなってくるるこの季節でも気持ちよくお飲みいただけます。料理とはしっかりしたお肉料理でなくても色々な料理と気軽に合わせることができます。
ヴァインベルクの赤ワインは飲食店でも大好評です。ドイツだからという先入観はなしにお飲みいただきたいワインです。美味しいワインを飲みたいというだけでなく、ドイツの赤ワインををもっと知りたいという方にもおすすめできます。
在庫の少ないワインも含まれますので、ご用意するセット数をかなり絞っての販売となります。規定数に達したら販売終了とさせていただきます。
・送料無料キャンペーン
現在はお買い上げ金額8,000円(税込)以上ですと送料を無料とさせていただきますので(通常は15,000円以上)、セット以外のご購入もこの機会にぜひご利用ください。送料が異なる北海道、四国、九州にも適用します。
3月までとしていましたが4月も継続して行っています。
ドイツワインショップ ヴァインベルク
http://weinbergwine.com